サムスン電子、見つからない「次の切り札」 スマホ不振、2000年以降で最大の危機に

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その後、同社のギャラクシーシリーズで大攻勢をかけて巻き返したものの、今年第2四半期には前年同期比で売上高が9%、営業利益は25%減少した。為替の影響を受けたが、高技術・中低価格で武装した中国メーカーの攻勢と欧州市場での不振、在庫の増加が足を引っ張った。

危機を乗り越える材料がない

それならば、これら危機を迎えた後のサムスン電子はどうだったのか。危機を迎えた後は3カ月後、あるいは半年で反転に成功している。2000~2013年、危機を迎えるたびに出されていた暗い展望をよそに、史上最大の業績を上げてきた。組織を変革し、事業のポートフォリオを調整し、新製品も投入したこともあった。

時には想像できないほどのマーケティングを行って危機から抜け出した。2011年がその好例だ。アップル社の攻勢に押され、2011年第1四半期の営業利益が2年ぶりに3兆円台に落ち込んだサムスン電子は、第2四半期にも苦戦が予想された。半導体や液晶パネルの市況もよくなかったためだ。

しかし、2011年第2四半期に「ギャラクシーS2」を上市し反転に成功した。その後、ほぼ四半期ごとに史上最高の業績を更新し、昨年第3四半期には営業利益が10兆ウォン台を超えた。

サムスン電子が今回の業績発表がこれまでにないほど衝撃的だった理由は、まさにここにある。今年の同社にとって、2四半期連続で危機を迎えた。これは、2000年以降初めてのことだ。中国勢の攻勢、在庫急増、マーケティング費用の増加、新製品の効果なし、欧州市場での苦戦など、この2四半期苦戦した理由が第3四半期まで持ち越されている。さらに、反転するための切り札もないのは決定的だ。

現在としては、半導体部門以外には状況を好転させる妙策も見えてこない。「半導体メーカーから携帯電話メーカーに変身したサムスン電子が、再び半導体メーカーに戻る」という指摘が広まっているのもこのためだ。特段の措置や変数がなければ、サムスン電子は第4四半期にも危機を避けられないように思える。市場では、同社の第4四半期の業績予想は、営業利益で4兆5900億ウォンだ。昨年の8兆3000億ウォンと比べると、45%程度減少することになる。

これまでそうだったように、サムスン電子がこのような悲観的な予想を覆すことができるカードを持っているだろうか。今後、底力を発揮できるか、サムスン電子は岐路に立っている。

韓国『中央日報エコノミスト2014年10月20日号)

キム・テユン 韓国『中央日報エコノミスト』記者

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キム・テユン

キム・テユン 韓国『中央日報エコノミスト』記者

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